▲ [column] シャボン玉が描くアーチ / 2003.7.13
昨晩、何気なくチャンネルをあわせていた際に放送していたTBS系CDTVから流れてきた、娘。の新曲シャボン玉のワンフレーズ。サビのほんのワンフレーズしか流れていなかったのだが、以前27時間テレビで聴いた時のそれとは随分と違う印象を受けた。

ほんの一瞬のことであったため確証は無いのだが、恐らくそのワンフレーズは藤本美貴のパートの部分であったと記憶している。
この歌のイメージに一番合うのは藤本の声であろうと言うのは、以前から多くの人が口にしていた事であるし、私自身もなるほど納得する事である訳だが、そういった意味でも、このワンフレーズは確かにこの曲における一番いい部分、ピンポイントで聴かせられる部分だったのかもしれない。

しかし、これらを加味しても、ほんの数秒間のワンフレーズでこの曲に対する印象がこうも変わるとは自分自身全く想像していなかっただけに、いささか意外な気持ちでいっぱいだ。ピンポイントでここまで与える印象を変える事が出来るというのは、正直驚き以外の何物でもない。

以前私はこの曲に対して、「これはつんく♂が軽い気持ちで作った、お試しの楽曲だ」と皮肉交じりの事を書いたのであるが、実は今では、もしかしたらこれは、かなり狙って作ったつんく♂の勝負曲なのかもしれないとも思うのだ。

今思い起こせば、現在の私のこの気持ちは、LOVEマシーンを初めて聴いた時のそれに非常に近いものがある。
私はこの当時はヲタでもファンでもなかったため、今現在と完全に比較する事は出来ないとは思うのだが、LOVEマシーンを初めて聴いた時は「つんく♂は気でも触れたか。最早やけくそだな。」と思ったものだ。

「変な歌」。第一印象は正にこれだった。

しかしながら、つんく♂は、LOVEマシーンは紛れも無い勝負曲であり、結果的に売れたのも全て狙った結果であったと言う事を口にしている。もちろん単なる後付理論なのかもしれないのだが。

今回のシャボン玉という楽曲も、言うなれば色物なのかもしれない。「変」という表現がこうもしっくり来る楽曲はそうは無い。
こうなれば当然、好き嫌いの差はより顕著に表れると思う訳だが、これは所謂王道からは逸脱した楽曲であり、単に好き嫌いというだけで、世間的に受けいられるのかどうかを判断することは現時点では確かに困難である。
だがしかし、だからこそこれは勝負曲であり、ブレイクの可能性を秘めた楽曲だと言う事も出来る。

冷静に考えてみたら、これは正につんく♂のやり方そのものである。

シャ乱Q時代から振り返ってみても、彼にはアベレージヒットという言葉は当てはまらなかった。
ホームランか、三振か。はたまたゲッツーか。実はこれらを象徴するかのように、彼は「モーニング娘。×つんく♂」の中で、LOVEマシーンを指して「清原が4番に入って、満塁ホームランを打ったようなもの」と例えているのだ。ここで清原を4番として想定しているところが、彼自身の考え方を顕著に反映しているとは考えられないだろうか。正に清原という選手は、ホームランか三振かの代表的な選手なのだから。

私は以前に、良曲にはインパクトが重要だと言ったことがあるが、彼が制作する楽曲において、勝負どころでは必ずこの「インパクト」というものを念頭に入れて作りこんだという印象を強く受ける。
恐らく楽曲に対してどんな印象でもいい、一瞬でも「お?」と思わせたら勝ち。非常に単純ではあるのだが、彼の話やコメントには、随所にこういったことをほのめかす言葉が良く出てくる。

そういった考え方に重点を置いて楽曲制作をしているのであれば、このシャボン玉という楽曲においても、彼の狙いは成功したとも言えるだろう。「変」と思わせた時点で、軍配は彼に上がるのだ。

もちろん、インパクトの面で成功したとしても、必ずしもこれが直接的に売上げに繋がるとは限らない。
彼の勝負はいつでもギャンブルである。上述の如く敢え無く三振に終わってしまう可能性も十分にあるのだ。しかし、この楽曲がホームランを打つ可能性があるものまた事実。特大のホームランを打てる可能性の秘めた楽曲である事もまた確固たる事実なのだ。

ホームランか。三振か。

この楽曲が、第2のLOVEマシーンの如く見事なアーチを描くところが、何故か今の私には容易に想像が出来る訳だが、これは果たして私の単なる妄想で終わるのだろうか。

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