事務所的キーパーソン / 2005.12.8
2005年度を締めくくる歌の祭典NHK紅白歌合戦では、ドーリームモーニング娘。と称し、新旧モーニング娘。が入り乱れてラブマを歌うのだそうで、いつまで経ってもあの当時の「国民的アイドル モーニング娘。」という構図から抜け出せない彼女たちを目にするのは、ちょいとばかり感傷的になってしまう。もっとも、抜け出せないのは現在の新モーニング娘。勢なのではなく、どちらかと言うと、旧モーニング娘。勢であるのだから、これは哀しさもひとしおだ。

『こんなにまで息の長いアイドルグループなんて過去に例がなかった』とは、モーニング娘。が特別であるということを指して表現される言葉なのだけど、結局のところ本質的には何ら特別なことは無い。モーニング娘。を卒業していったメンバーには、これと言って目立った活動も無く、この様にモーニング娘。という枠にいつまでもしがみついていなければ、タレントという肩書きを維持することですらままならない。メンバーの入れ替わりという、特別なやり方があるだけに、モーニング娘。という媒体は残っていても、メンバーである当事者たちは何も特別なことは無いのだ。

当然これらは、戦略による影響がモロに出た結果であり、その戦略である入れ替えという制度を導入していなければ、とっくの昔にモーニング娘。という媒体すらも残っていなかったはず。つまり、モーニング娘。が特別であり、過去のアイドルグループと比較して明らかに異質だったのは、偏にその入れ替えという制度によるものであり、各時代を構成していたメンバーなのではない。紅白という大舞台で、派手に旧モーニング娘。のメンバーが歌い踊れば、「久しぶりの仕事だから必死になっているんだろうなあ・・・」と多くの人間に思われてしまうのが関の山。そのようなことを考え出すと、なんだか無性に切なくなってきてしまうのだ。

ドーリームモーニング娘。として出場するにも拘らず、DEF.DIVAが別枠で出場するのも、恐らく上述のことが影響しているのだろう。少なくとも後藤・安倍・石川という旧モーニング娘。のメンバーは、他のメンバーと同じと思われてはならない。娘。を卒業してもそれに依存することなく、しっかりと活動を行い、「別枠で」紅白にだって出れているんだぞという世間に対するアピールが重要であり、そのためにはDEF.DIVAでの出場は必要不可欠である。ドーリームモーニング娘。というお祭りには、あくまでも付き合いで参加しているだけという無理矢理な誇示。この3人にとってはそれが何よりも重要だったのだ。

しかしここで気になるべくは、その対象が果たして本当に3人なのかということ。否。これは、3人が同列に扱われているのではなく、恐らく石川梨華という存在がいたからこその結果であると私は推測する。

これは、この「歌姫」という謳い文句で売り出されたDEF.DIVAというユニットにねじ込まれ、さらには松浦亜弥&DEF.DIVAという別枠での紅白出場まで用意された石川梨華は、相変わらず事務所にとってのキーパーソンとして扱われているのだという確固たる証拠である。この結果から、2006年度の石川梨華を取り巻く環境は、他の旧モーニング娘。メンバーと比較しても、今年度と変わらず恵まれたものになるのだろうけど、この恩恵を、果たしてどこまで石川梨華という人物が還元していけるのか。問題はそこにあるのだろう。

ALL FOR ONE & ONE FOR ALLでは無いけれど、モーニング娘。を卒業した石川梨華には、他のメンバーと比較して大いに恵まれているその活動内容と引き換えに、ハロプロという枠に、少なからずの潤いを与えることが現在の責務になっているのだと思う。「なんで美勇伝ばっかり新曲リリースしてるの?」ではなく、「やっぱ美勇伝だから新曲リリースが多いんだよね。」。少なくともそのように思わせることこそが、2006年度の石川梨華の課題であり、さりげなく美勇伝のリーダーをやっていればいいような立場では、すでにないはずなのだ。

ただ、正直言ってそんな大それた任務など実現不可能だろう。しかし、少なくともそういった意識を持って活動をしているということが全く伝わってこないようならば、いつまで経っても石川梨華に対する事務所プッシュを肯定することなど出来やしない。事務所のこの期待は一体いつまで続くのか。案外残された時間は少ないような気がする。
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