■ 短期連載TEXT ■ - モーニング娘。にとっての「解散」 -



■ 短期連載TEXT ■ - モーニング娘。にとっての「解散」 -
【第1章】 ターゲット層の固定化
最近どうも安倍なつみの娘。卒業という疑惑ばかりが私の頭を擡げてしまうのは、偏に彼女の卒業が、以前の卒業者とは本質的に全く違うものであるからな訳であり、こうして現実問題として直面するまでは、この様な事は全く考えもしなかった事態であったということも大いに関係しているのだと思う。私が以前まで、彼女の卒業などは一生やってこないと思い込んでしまっていたのは、「娘。の顔である安倍なつみの卒業は、同時に娘。解散の時である。」といった考えが無意識的にでも私の中にあったからなのだろう。

しかし、実際問題安倍なつみの卒業は、こうして日々現実味を帯びてくるのに対し、娘。が解散をするという雰囲気は微塵も感じられ無い。それ以上に、娘。が今後の更なる飛躍をも目論んでいるであろう事は、現時点では否定しようの無い事実である。

もしかしたら、モーニング娘。というグループは一生解散する事は無いのかもしれない。

私がこんな事をふと思ってしまったのも、実は至極当然の事なんだと思う。事務所のやり方を見ていたら、今後も娘。を世に存続させ続けることだけを念頭に、あらゆる不毛な措置をとっていると思ってしまっても、何らおかしなことでは無いのだから。

彼らは、娘。に対して、10代から20代をターゲット層として狙うハロプロの一グループという位置付けをしており、これは恐らくこの先もずっと変わらないポジションであろう。10年経っても娘。は、10代から20代をターゲットとしたグループということになる。
もちろんこれは、その時、その時の10代、20代をターゲットにしているという事を意味している訳で、言うなれば今現在20代の人間が歳をとって30代になっても全く構わない。人類が子孫繁栄をやめてしまわない限りは、この先変わらず新たな20代は確実に生まれて来る訳であるし、その新たな20代こそが、新たなターゲット層になるのだから。

そうであればこれは、娘。自体の歳もとらせる訳にはいかないということも同時に意味する。
未来永劫ターゲットの年齢層が上がらないのであれば、娘。の年齢も未来永劫変わらないような措置を取らざるをえない。10代から20代の人間が、30代のおばさんアイドルグループを応援するようになるはずはないのだ。

ところが、当然のことながら人間は日一日と歳をとっていく。これは人間のみならず生物界全体の普遍概念であり、避け様の無い事。思えばデビュー当時16歳だった安倍なつみも、もう22歳。時の流れとは意外と早いものである。誰しもが歳をとる事が避けられない事であるからこそ、同じ人間をいつまでも娘。に置いておく訳にはいかない。それはもちろん、その人間がいることで、娘。の平均年齢は上がってしまうことが原因だ。

結果的に年配者は卒業の一途を辿る。さらに若年者を加入させることで、娘。の平均年齢を上げないような措置を取っている。
これこそが、「変化させてあきさせない」という、一時的な見解でしかなく、全く以って同意することなど出来るはずもない、言わばその場しのぎの言い訳をしながらも、彼らに何度となくメンバーの加入脱退を繰り返させる本当の理由でもある訳だ。

ただ、ここまでは娘。だけの話。
残念ながらこれだけでは、娘。のターゲット層の年齢固定という戦略は、ただの愚計に終わってしまう。その時代その時代の10代、20代が、お決まりのように突然娘。、ひいてはハロプロに興味を持つようになるとは到底思えない。こんなことは誰もが気がつくことであり、さすがにこの事務所だってこれには気がついている。

彼らは実は今からその対策もしっかりと立てていたのだ。我々にとっては不毛とすら思えてしまう対策を。
2003.7.24記

【第2章】 悪魔の囁き
事務所が行う、どの時代においても娘。を10代、20代をターゲットとして特別な関心を抱かせるための措置、対策。特に最近となってより露骨となっているその対策とは何なのか。

言うまでも無く、それは、子供のハートを掴んで話さないミニモニ。であり、子供に対してタレントになれるかもしれないと言う夢を与えるハロー!プロジェクトキッズである。

これらユニットの目的とは、娘。がターゲットとしている年齢層になる前の幼少期に、ミニモニ。に興味を抱かせること。ハロープロジェクトキッズたるものの一員に、自分もなれるかもしれないと思わせることで、更なる興味を抱かせること。こうした最初のきっかけから、最終的には年齢と共に娘。本体の方へと興味の対象をシフトさせていくというからくり。

もちろん、これ以外にも子供たちに興味を抱かせるような措置はあれこれと取っている。

良い子のみんな、キッズになれなくっても、諦めちゃダメだぞ。もう少し大きくなれば、モーニング娘。になることだって出来るんだから。でも、やっぱりモーニング娘。になるには、モーニング娘。が大好きだ!って言ってくれる人の方が嬉しいなあ。実際に最近はそういう人ばかりが受かっているのもみんな知っているよね!だからみんなも、どんどんモーニング娘。を好きになって、モーニング娘。のメンバーになれるように頑張ろうね!
モーニング娘。のオーディションでは、モーニング娘。の歌を歌うことになっているから、CDは全部買わないとダメだぞ。この際振り付けも覚えて、モーニング娘。好きもアピールだ!そのためにはDVDも買わなくちゃね☆

こうした、子供たちのハートを鷲づかみにする、まるで悪魔のような囁き。

実際、幼少時に心から好きになったもの、興味を持ったものは、大人になっても心惹かれるものである。幼少時にミニモニ。にはまった子供たちが、歳を重ねるにつれ、ちょっと大人の気分でモーニング娘。を応援するようになる。これは結局、私が以前に、「ハロープロジェクトというプロジェクト全体の知名度アップが、今現在の最重要課題」と言っていたことに対する答えにもなっている訳だ。とにかく娘。以外のユニットにも興味を持ってもらわなければ、この戦略は成功しないのだから。

実はこういった戦略、つまり各ユニットごとでファンの年齢層を固定化し、歳をとると共に推しユニットをシフトさせ、ファン側に段階を踏ませるという戦略は何も目新しいものではない。どの企業においても、こういった年齢層を固定したセールス戦略なんていうものは当然のように行われている訳であり、ここにきて彼らがとりわけ斬新な事をしているというわけではないのだ。

しかし、この戦略を娘。というアイドルグループに適用させたのが先例の無い事。前代未聞であり、恐らく今後もこういった戦略を用いるような芸能プロダクションは現れないであろう。
それはもちろん、『誰々のいるグループ』という認識こそが、そのグループに対する世間の認識であり、そのグループ自体の存在意義でもあったから。そういった概念を自分達で壊してしまう様な行為は、正常な人にとって見れば、とんでもない愚行にしか映らない。

事実、年齢層を固定化することが、結果的には卒業加入の繰り返しを助長させ、メンバー一人一人に対する扱いが粗雑となる要因ともなった訳だし、推しメンの卒業がきっかけで、娘。ファンをやめる人間が出ていることもまた事実だ。ファンを離反させるという行為が、賢い戦略と言えるであろうか。わざわざこの様な戦略を打ち立てる必要性が果たしてどこにあったと言うのだろうか。

しかし彼らは、こういった「ファンの離反」という状況に対する対策も、実はある程度視野に入れているようなのだ。
2003.7.26記

【第3章】 希望ある卒業
「ファンの離反」という事態に対する、事務所の第3の戦略。これはもちろん、娘。ファンをやめてしまった人間を再びファンとして取り込むことであるのは言うまでもない。そしてそれは当然、娘。ファンとしての取り込みではなく、ソロで活動をするようになる卒業者へのファンとしての取り込みであり、ヲタが、卒業した推しメンを、今度はソロとして支えていく存在になるための戦略である。

そのためには「卒業」というものに、ネガティブなイメージをもたせない事がとりわけ重要だ。
卒業する事が、本当の意味での新たなるスタートとして、本人も、そしてファン側も大いに納得できるような状況をつくる事。そうすることが、一度は落胆したファンが、卒業後も心の底から応援をしようと思える原動力ともなり得る。これはつまり、卒業後の活動に希望を持たせることが必要となる訳である。

実は、そういった考えが、実際に最近の後藤真希の精力的なリリースという形で示されており、こういったことからも、事務所の戦略としてこれらが掲げられている事は、大いに考えられる事ではある。

今までの卒業者のほぼ全員が、娘。を卒業する事で「歌手」としての本来の仕事が減り、ただの一タレントに化して行く姿を目の当たりにしているだけに、卒業には「終焉」というイメージが付きまとうものの、事務所はそのイメージを払拭しようと動いていることも、好意的に捉えれば考えられなくもない。

娘。を卒業しても、ソロでも十分に満足できるだけの活動をするではないか。純粋にグループからソロシンガーに転向しただけではないか。

ファンにこう思わせることこそが、今回述べた「年齢層の固定化」によって生まれるメンバーの卒業というものを、事務所側が正当なものとして主張する事のできる唯一の手段なのだ。娘。を常に時代の先端に位置付ける事で、そのしわ寄せがメンバーの卒業という事態を招く事は、恐らくこれからも避け様の無い事。しかしだからこそ、その事後処理における紳士的な姿勢こそが、本当に重要となってくる部分である。

ファンに卒業を否定させるのではなく、むしろ肯定するような状況を生み出す。

表向きにはあまり感じられないが、後藤真希のソロライブが絶賛されているのは事実であるし、こういったことが、少なからず事務所がソロ活動に対する演出にも力を入れている結果であると考えたい。これからの卒業者も変わらずそうなるという事を私は信じたい。
そうならなければ、娘。から卒業をすることは、本当にリストラと変わらなくなってしまうのであるから。

最後に、今回の3回のテキストにおける、総括的な結論として。

事務所が我々ヲタに新たに提示しようとしている事は、「推しメンの卒業とともに、娘。ヲタであることも卒業する。」ということであるのは、恐らく間違いないことなのだと思う。
これこそが、事務所が我々ヲタに差し向けた道であるということ。

『晴れ晴れとした気分で、推しメンと一緒に娘。ヲタを卒業し、これからはソロとして活躍する彼女たちの方を応援してください。モーニング娘。にはあなたたちよりも若い層が、今ファンとして確立しつつあります。モーニング娘。はここから新たなスタートを切るんですから。』
良し悪しの判断は私には出来ないが、これが今現在事務所の考える方針であると私は思っている。

一生解散しないモーニング娘。
今回のテキストを書くきっかけともなったこの言葉の通り、表面的にはモーニング娘。は恐らくこれから先も解散しないのであろう。
しかし、推しメンの卒業によるその時代、その時代のファン層の解散。ある意味においては、これこそがモーニング娘。にとっての一つの「解散」とも言えるのかもしれない。
2003.7.27記

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