■ 短期連載TEXT ■ - 理想型システム確立に向けた長期的展望論 -



■ 短期連載TEXT ■ - 理想型システム確立に向けた長期的展望論 -
【第1章】 インパクト作り
ここ最近よく目にする、事務所の「インパクト作り」という言葉。
しかし、事務所が行ってきたメンバーの卒業と言う措置は、本当にただの「インパクト作り」が目的で行ったものなのだろうか。これには大いに疑問が残る。もちろん、その効果を一時的に期待している部分は少なからずあるのだろうが、高々そんな一時のインパクトの為だけにあのような措置を取っているとはとても考えにくいのだ。

ここで念頭に入れておかねばならない事は、なによりも前提として、事務所は今後も存続し続けなければならないということだ。それは例えモーニング娘。がこの世からなくなってしまおうとも。モーニング娘。を抱えているのは他でもない事務所なわけであり、娘。も一所属タレントに過ぎないのであるから、優位性の観点からも、この考え方は妥当であろう。

しかし、ここで大きな問題であり忘れてはならないのは、現時点においてその事務所が存続するためには、モーニング娘。の存在は必要条件であり、絶対的な条件であるということだ。
今現在UFAにおける一番の稼ぎ頭であるモーニング娘。。彼女達が歌い踊り、テレビ番組に出演し、更には写真集を発売し、エッセイを発売し…。この様に身体に鞭を打って過密スケジュールをこなす事で、事務所が成り立ち、事務所の社員全員の生活が成り立っている。言い過ぎかもしれないが、今現在においては、娘。こそが事務所の命綱でもあるわけだ。

ただ残念ながら、娘。が存在するという事だけでは、前提でもある事務所存続の十分条件にはなり得ない。そこには他の条件が必要不可欠であり、もちろんこれは言うまでも無く「娘。がこれから先も活躍し続ける事」。この2つの条件がそろって初めてこれらが必要十分条件として成立するのである。

これらの条件を満たすためには、一時的なインパクトという観点のみで措置を取っているとは到底思えないし、仮にもしそうなのだとしたら、この事務所に未来はないと断言する。

彼らは最早一時的なインパクトにより、再び爆発的な人気をお手軽に得ようなどという楽観的な考えは恐らく持ってはいない。以前に起こった爆発的な娘。ブームは全て偶然の代物であり、ただ単にラッキーなだけだったと捉えているはずだ。彼らが行ってきた様々な措置は、我々にとっては明らかなる不毛な措置であり、何の戦略性も無いように映るため、ともすればただの一時的な話題性の為だけに取っている措置だと思いがちだが、それは大きな間違いだと私は思う。

今現在彼らが行っている戦略の全ては、長期的な展望をもって行われているのであろうことは、実はある程度予測の出来ること。キッズをはじめ、ZYXの売り出しは、明らかに長期的な視点で活動している事の現われでもある。
一過性のブームだけの為に、肉を切らせて骨を断つような捨て身の戦略などできるはずはない。何よりもこの措置は、事務所の存続そのものに関わる事なのだから。

今や、このサイトにですら「モーニング娘。になるためには」という検索で訪問する人がいるほど、モーニング娘。は子供にとっては大きな夢でもあり、実現するかもしれない夢である。良くも悪くも、この子供たちの強い思いを利用する事。今やもうこれこそが、娘。により、事務所を存続させる事のできる唯一の手段である。これら子供たちのこの思いこそが、必要十分条件を成立させる事のできる最後の頼みの綱なのだ。

しかしそんな中、この事務所は、にわかに新しい動きを見せ始めているようなのだ。正に長期的な戦略としての新たな動きを。
2003.9.4記

【第2章】 理想的なシステム
にわかに見せ始めた彼らの新たな動きとは、実は「理想的なシステムの確立」に向けた動きのことである。そしてその理想として掲げている、アイドルプロデュース業におけるシステムとは、新たなグループが台頭することで、古いグループにとって代わるという循環型のシステム。新たなグループが出現し、以前のグループと入れ替わる事で、それに付随して新たなファン層を生み出し、常に時代のトップに自分たちの抱えるグループがい続けるというこのシステムである。

盛者必衰が世の常。いつまでも同じグループが、変わらずに人気を維持し続ける事は出来ない。事務所にとってみれば、常に新たな人気グループが出現する事こそが最大の理想形。

しかし残念ながら今現在この事務所には、こういった常に新たなアイドルグループを出現させ、循環的に長期プロデュースするという理想的なシステムを確立するためのノウハウがない。理想的な最終形態としては、正にこの揺るぎないシステムを確立する事にあるものの、今現在ではまだまだ、これから少しづつこのシステムを習得していく段階にいるというのが現状である。

それゆえ、このシステム確立の為に、長期的な展望をもち今現在地道なプロデュースを展開している訳であり、こういったことからも、第1章ですでに述べたように、「一時的なインパクト」という観点のみに固執した措置はすでに取っていないと考える事の方が妥当だ。安倍なつみの卒業も、全ては「長期的な」視点で見た時に必要となるために取った措置であり、「一時的な」話題作りの為に行った措置ではない。

実は、彼らが行う卒業脱退その他の措置は、全てはこの理想的なシステムを確立させる為に行った措置であると考える事が出来る。一見不毛とも思えるありとあらゆる措置が、ただただこのシステムを確立することを目的として行ったと考えれば、驚くほどに辻褄が合うのだ。そしてこの「理想的なシステムの確立」こそが、他でもない「長期的な展望」の先に見据えている彼らの目標でもある。

そんな彼らが今現在最も危惧しているのが、このシステム確立のための頼みの綱が、娘。だけであるということ。それは当然、彼らが目指す「新グループ、ユニットが出現することで新たなファン層を生み出す」というこのシステムを確立するためには、娘。を越えるようなグループ、ユニットがハロープロジェクト内に存在することが必要となるからであり、娘。だけが今後躍進しても、このシステムは実現しないことに起因する。
しかしながら、現時点においては、娘。を越えるようなグループ・ユニットが、ハロープロジェクト内には存在しないのもまた事実。

本来ならば娘。だけに固執する必要などは全くないのだ。循環型のシステムである以上、娘。に取って代わる新たなグループが台頭すれば、ハロープロジェクトの頂点をそちらにシフトすればいいだけの話。そしてこれこそが、先程から述べている理想的なシステムそのものなのだから。

そうであれば、なぜこうまでして彼らは娘。にこだわり続けるのか。

このシステムを確立するためには、娘。が存在する状況で、それを越える新ユニットが出現する事が必要であり、できるだけ娘。を延命させねばならない。全てはこれらの思いからの「苦肉の策」。正にこの一言に尽きると思われるのである。
2003.9.5記

【第3章】 苦肉の策
娘。にこだわる理由とは、実は単なる「苦肉の策」であった。

完全に理想型システムを確立するためには、何度も言うように、同じハロープロジェクト内に、娘。を越えるグループ・ユニットが存在せねばならないが、残念ながらこればかりは、事務所の力だけで何とかなるものではない。彼らが出来ることと言えば、新たなグループ・ユニットを結成することだけであり、そのグループ・ユニットが娘。を越えるに至るかどうかまでは、当然のことながら操作することなどは出来ない。

しかし、そんな切望する新ユニットの登場を待つ間に、現在のハロプロの頂点でもある娘。が衰退し、完全に消滅してしまったら。
彼らには、何のテコ入れもしないまま、娘。がこのまま徐々に衰退していくのを尻目に、新たなユニットが出現するのを待つだけの勇気と、精神的な余裕がなかった。

この理想型システムを今すぐに確立することは無理ではあるものの、「モーニング娘。」という未来への希望とも言える火種を、そのままやすやすと絶やす訳にはいかない。ひょんなことからここまで大きくなった「モーニング娘。」という冠を大いに利用し、将来の理想的なシステム確立への序奏ともいえるような措置を、次へのステップともいえるような措置を、今から施しておかねばならない。そのためにはモーニング娘。を簡単に終わらせる訳にはいかない。
彼らはこう考えた。

この理想型システムにおいて、本質的に最も重要なのは、「新たなユニットが出現する事で新たなファン層を生み出す」という目標における「新たなファン層を生み出す」という部分である事は言うまでもない。重要なのは、常に新たなファンを作り出す事で、時代と共にファンを循環させるということ。

では、理想的なシステムを導入しないまま、モーニング娘。という媒体を利用して、その本質的に重要な部分「新たなファン層を生み出す」為には一体どうしたらいいのか。

本来ならば、この新たなファン層は、新たなユニットの登場によってのみ確立する事のできるものであるが、その実現が困難である彼らは「モーニング娘。」というグループ名のみを固定し、その中身に変化を起こす事で、新たなファン層を生み出そうと画策したのだ。

表面的には変化させずに、中身だけを変化させる事で、ファン層を循環させるという、苦し紛れの対策。これこそが今現在、長期的な展望のもと「理想型システム」を確立するまでの『つなぎ』として、「モーニング娘。」という冠を最大限に利用し、尚且つある程度のファン層の循環をも実現できる、彼らが導き出した、言ってみれば「一時的なシステム」である。
そしてこれが、卒業加入の繰り返しを続ける一つの理由でもあり、前章ですでに述べたとおり、理想型システム確立を目的としてとられた措置でもあった。

この一時的なシステムが完全に機能すれば、理論上、本来理想として掲げているシステムと、結果的には同じ効果を期待できる。もちろん、完全に機能すればの話ではあるが。

彼らは最終的な理想型システム確立までの間、苦肉の策としてこの手法を考え出し、娘。内部の循環を生み出すためにメンバーの卒業加入を敢行。そしてそれに付随したファン層の循環を実現しようと目論んだ。しかしこれはあくまでも一時的なしのぎに過ぎず、これだけでは長期的な展望とは到底言えたものではない。長期的な展望の先に見据えているのは、言うまでも無く理想型システムの確立なのだから。

そんな中、そのシステムを確立するための対策も、実はすでに彼らは実行に移していたのである。
2003.9.6記

【第4章】 新ユニットの重要性
一時的なしのぎにしか過ぎない、今現在のシステムから、理想的なシステム導入に完全シフトするためには、前章から何度も述べている通り、新たな人気ユニットの存在が必要不可欠である。彼らが理想的なシステム確立を目指している以上は、この新ユニットの出現に対する措置も十分に考えねばならぬ事である訳だが、実はこれに関しても、今からそのための対策はすでに実行されていたのだ。

今現在事務所が命運をかけてプロデュースする対象として位置付けているユニット。今後確実に力を入れてプロデュースする対象として考えられているユニット。理想的なシステム導入のための布石ともなり得る、重大なるユニット。もちろんこれが、今現在募集しているハロプロ新ユニットであることは言うまでもない。

何故今頃新ユニットを募集したのか。ここまで様々なユニットがすでに存在している現状、果たして新たにユニットを作る必要などはあるのか。
そういった疑問を全て払拭する、新ユニット結成のための真意は、正にこの理想型システムを確立するという目標を達成するためであった。

長期的な戦略として掲げられている、この理想型システムの確立を実現させるための第一歩は、恐らくこの新ユニットにあるものと思われる。このユニットが、ともすればモーニング娘。を越えるほどの、少なくともその近くにまで到達できるほどのユニットになること、そうする事こそが、この長期的な戦略の果てにある、理想型システム確立を成功させる事のできる、最低条件なのだ。

その為、確実にこの新ユニットは、事務所から大々的なプロデュースを受けることとなり、時間が経つにつれて、あたかもモーニング娘。に変わる、ハロープロジェクトの新たな顔であるかのようなプロデュースの受け方すらするのであろうことは、想像に難しくない。今回の新ユニットは、軽い気持ちで結成しようとしているものなどでは決してなく、今後のハロプロの進退をも決定付けるほどの、重大なるユニットであったのだ。

しかし、最も危惧すべきは、そこまで力を入れるこの新ユニットが、結果的には失敗に終わり、長期戦略実現のための核になり得なかった場合。そうなればこれは、ハロープロジェクトというプロジェクトの終焉が現実味を帯びてくるのかもしれない。

何よりもこのユニットでも娘。を超える事が出来なければ、理想型システム確立のための必要条件が破綻することで、必要最低限の条件すらそろわないばかりか、大々的なプロデュースを敢行した挙句、新ユニットの人気度も認知度も全く上がらないといった現実に直面した彼らに、再び新たなるユニットを掲げるほどの余力は恐らく残ってはいないであろう。
この新ユニットの募集、その後の結成は、彼らの行う最初にして最後の博打。ある意味においてはこう考える事ができるような気もする。

とにかくこの新ユニットの募集を期に、サイはもう投げられてしまったのだ。果たして結果は吉と出るのか。はたまた凶と出るのか。

ハロープロジェクト全体の命運をつかさどるほどの重大なる新ユニット。
この新ユニットのデビュー日が、或いはハロプロの、ひいては事務所の未来をも決定づける、正に審判の日となるのかもしれない。
2003.9.7記

【編集後記】 テキストを書き終えて思うこと
結局ボクがこの様な屁理屈を、一生懸命になって書いているのって、恐らくは自己防衛なのでないかなあと思うわけですよ。自分自身。

ハロプロ構造改革当時のボクには、今のようにあれこれと考える事などは全く無かったため、その発表を耳にした際、あまりの衝撃に愕然とし、そして彼らから、それはもういいように馬鹿にされているような気にもなり、にわかに怒りがこみ上げてきました。
更には、彼らが何を考えているのか全く理解できずに、あれこれ思い悩んだりもしたものでした。

これらの屁理屈が、例え結果的に当たっていようが、間違っていようが、正直言ってボクにはそれはほんの些細な事に過ぎません。こんなものは憶測の域を越えるはずも無い訳ですし、はずれて当然、当たれば偶然というだけです。

ボクにとって重要なのは、自分の中でこういった理由付けをしておくことで、その後に不毛な措置を取られても、彼らに踊らされずに済むという事なんです。

もちろんこれらは、理屈も何も無いただの憶測であってはならない訳で、ある程度論理的でなければ、自分自身納得もできません。それゆえ、あれこれと理屈を考えては、結論を導いている訳であり、なんの論理性も無い邪推であってはならないのは確かですが。

ボクは彼らが馬鹿だとは当然思っていませんし、全ては明確なる目的と戦略があるからこそ、行っている措置だと思っています。だからこそ、彼らの立場で考えれば、自ずと答えが出てくるわけであり、今まで行われてきた事に対する理由付け、今後の戦略に対する推測もできる訳です。

これがまず前提の条件としてボクの中にはある訳で、この前提条件が破綻すれば、すなわち彼らがただの馬鹿だったとしたら、最早ボクの考えている事などは、ボク自身の自己防衛にすらなり得ません。

今のところそうは思っていないのは事実ですが、今後もし、この前提条件の破綻が起こりうるのであれば、それは最近ちょくちょく耳にする「松浦を娘。に加入させる」という、全くもって笑い話にもなら無いような措置が、あろうことか現実になったその時。

と言うのも、これに関しては、ボク自身が松浦ヲタであるという事実を差し引いても、全く戦略性を感じませんし、何の意味もなさない事であるからです。戦略性も先見性も何も無い。幼い子供が考えたかのような幼稚な推測。

こういった事を口にする人達の多くは、恐らく事務所が行っている事は全て、一時的なインパクトや話題を作るために行っていると思っているのでしょう。その一時的なインパクトという観点では、確かに「松浦の加入」以上に衝撃的なことは無いと思いますし、それゆえこの様な結論に至るのだと思います。

しかし、事務所サイドがしっかりとした戦略性をもって、あらゆる措置を取っているのであれば、何度も言いますが、「一時的な話題性」などは眼中に無いでしょうし、このあまりにも不毛な結論には絶対に至らないはずです。

もし仮に、何の戦略性も無い、この様な愚計を実行に移すのであれば、その瞬間、彼らは「ただの馬鹿」に成り下がります。いいや、最早これは馬鹿以下です。

とにかく、「松浦の娘。加入」などは、前提条件が破綻しない限りは(何度も言うようにここが重要なのですが)、絶対に起こりえないことですし、彼らはすでにもう先の事を視野に入れていますよ。ボクはそれが言いたかった。
とまあ、こうやって書いていること自体が、すでにただの自己防衛であるということも十分に考えられるのですが。

ただ、絶対に無いとは思いますが、もし本当に松浦が娘。に加入したらボク自身どうなるのかなあ。なんて思ってみたり。
2003.9.8記

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