▲ [column] 蘇ったつんく♂ / 2002.10.24
どうやらつんく♂はまだ地に堕ちていなかったようだ。
新曲「ここにいるぜぇ!」から、彼の持つ凄まじいほどのエネルギーと勢いを感じたことがその理由だ。

恐らく今回のこの曲は、つんく♂がふと思いついたフレーズを譜面に一気に書き殴って完成させたといった感じなのだろう。これはまさにその通りであり、そういった勢いが素直に現れている、非常に素晴らしい曲となっている。
曲調自体はなんのひねりもなく、勢いのみで書き上げた曲としては、すこぶる納得のいく非常に単純な曲である。しかしだからこそ、この曲には彼自身の勢いが、濁りのない純粋なエネルギーとして見事に反映されているのだ。

「売れるためにはどうしたらいいのか」、「今の流行がこうだからこういったテイストで」、そういった邪念のようなものは全く感じない。何も考えずに、閃いたフレーズを、感じたままに書き上げたことが逆にいい結果を生んだのだろう。

彼自身が常日頃から悩んでいた娘。達の方向性。
そういった暗中模索の中をようやく抜け出し、再び活力と生命力とを取り戻したつんく♂は、どうやら一皮向けたようである。

そして恐らくこれが、第6期メンバーの追加ということに繋がったことは想像に難しくない。

前回の第5期メンバーの追加とは本質的な違いがここにある。
前回の追加は、つんく♂自身、自分の中ではっきりと確立していなかった娘。達の方向性、そして今後自分が作る音楽面での方向性、そういったあらゆる苦悩を抱えたまま、少しでも自分自身の苦悩を打開するために、自分の閃きの助けとなるであろう感情を駆り立てるような存在が現れることを、彼自身が期待し切望し行ったオーディションであった。

それに対し今回のオーディションは、はっきりと自分の中で芽生えた方向性にそぐう存在、今後の活動に確実にプラスになる存在のみを求めている。だからこそ、今回は該当者がない場合もあると言っている。そこには確固たる方向性があるからだ。

前回の自分の枯渇した才能を再び蘇らせるために行われたオーディションとは違い、今回ははっきりとした目的があり、彼の中ではどういう人間が今後の娘。には必要なのかといったイメージもすでに出来上がっている。
逆に言うと、今回オーディションで合格した人間は、今後の娘。の中核として迎えられると言っても過言ではない。

後藤真希という中心人物がいなくなり、一つの時代を終えた娘。。
しかし、皮肉にもそのおかげで、つんく♂の勢いとエネルギーが再び蘇った。そして、着実に新たなモーニング娘。が動き出している。

私はつんく♂を見直した。

以前につんく♂はこう言ったことがある。
「何やってもアカンて言われる時期が来る。それを抜け出すためには、プライドを捨て、流れに乗っていくということ、流れに身を任せることが大切なんや。」
彼は、もはやプライドを捨てた。流れに身を任せ、その流れに全てを委ねた。開き直ったつんく♂には、もはや気負いなど微塵もない。そして体中から湧き上がってきた活力は、再び彼にアイデアと才能を蘇らせた。

つんく♂は、やはり私が思ってた以上に大物だった。
「卒業」、「編成」。事あるごとに我々が反発し、批判をしても全く動じないのも当然だ。彼が信じているのは自分自身のフィーリングだけであり、それが流れに乗るための最良で最短の手段であるという確固たる自信がある。
やはり彼は、我々一般人などが及ぶことも出来ない人物だったようだ。

つんく♂にとって、娘。が全てであるというのと同様に、やはり娘。にとっても、つんく♂が全てである。私は今回の曲で、娘。がここまで来れたのはつんく♂だからこそなのだということを、改めて認識することとなった。
所詮我々が出来ることといえば、悔しいがやはりつんく♂の決定を素直に受け入れることしかないようだ。つんく♂という人間は、我々が批判して噛み付くには、余りにも大きな存在であると言わざるを得ない。
とは言え、納得のいかないことがあったら、恐らく今後も噛み付くとは思うが。

だがしかし、もちろんいつの日か彼の才能も完全に枯渇する日が来るのは当然だ。いつか完全枯渇してしまうであろうつんく♂の才能が、なるべく長続きすることを切実に願うばかりである。ただ個人的には、衰退気味だったエネルギーをここまで蘇らせた彼は、今後もまだまだ一花も二花も咲かせてくれそうな気がしてならないし、十分に期待できると思う。

今回が、一時的な栄華ではないことを願って・・・。
つんく♂さんよ、期待しているぜ。

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